登った山

槍ヶ岳、大喰岳

日程

2005年6月4-5日

行程

1日目
上高地-明神-徳沢-横尾-槍沢ロッジ-ババ平-グリーンバンド-槍ヶ岳山荘(小屋泊)
2日目
槍ヶ岳山荘-大喰岳-槍ヶ岳-槍ヶ岳山荘-グリーンバンド-ババ平-槍沢ロッジ-横尾-徳沢-明神-上高地

1日目の記録

5月23日から僕のもう一つの趣味であるテニスの全仏オープンが開催されており、気分は山よりもテニスである。何事にも影響を受けやすい僕は、ここ2週は山の予定もテニスに変更して山をサボっていたのだが、梅雨入り前の最後の週末は、全仏オープンの決勝試合が放映されるが気分を山モードに戻すため、登っていない百名山の槍ヶ岳に登る事とした。ちなみに、全仏オープン女子では、僕が応援している「エナン」が優勝したので、山・テニス共に最高の週末となった。

05:49 上高地より穂高岳方面を望む

岐阜・長野共に土曜は雨、日曜は岐阜が晴れ、長野が曇り時々晴れという微妙な天気予報ではあったが、土曜の雨を我慢すれば日曜は晴れの山頂に立てるだろうと思い、新宿から夜行バスのさわやか信州号に乗って上高地にやってきた。バスの中では前の席が空いていたので、一人で2席を使う事ができ、ぐっすりとはいかないがそこそこ眠る事ができた。

06:25 明神

上高地から明神までの道では、明神岳を撮影するカメラマン以外に登山者とは一人も出会わなかった。さすがに明神に到着すると登山者が休憩していたが、GWには登山者が沢山訪れると聞くのに、何故今日は人がいないのだろうか?人がいない方が気分爽快で歩けると思うのだが、何とも不思議である。歩き始めてまだ1時間も経っていないので、そのまま通過する。

07:11 徳沢

このルートは梓川の清流っぷりに河童橋から見える穂高方面の景色に明神岳・前穂高岳の素晴らしい山容を眺められる素晴らしいルートではあるが、地図タイムで3時間も平地をだらだらと歩かなければならないので、余り好きではない。だまってここも写真を一枚撮ってそのまま通過する。

07:53 横尾

横尾と言えばこの風景だ。ガスガスで展望を望めなかった穂高岳にリベンジの思いは強いが、今日の目的は槍ヶ岳である。という事で穂高岳の思いを断ち切って、足を槍ヶ岳に向ける。横尾では新潟から一睡もせずにやってきた単独行の小熊(おぐま)さんと出会い、「この先でまた会うでしょうからよろしく」と伝え、槍ヶ岳に向かう。

07:55 槍ヶ岳まであと11キロ

もう既に11キロも歩いて来たのに、案内板を見ると槍ヶ岳までは更に11キロあるらしい・・・。しかも全く標高を稼いでいない。さすが槍ヶ岳で、ヘビーな行程だ。だからこそ登り甲斐があるし、山頂に到達した時の喜び・感動も高いのであるが、今時点では辛いだけである。

08:58 槍沢ロッジ

さすがに3時間歩きっぱなしで来たので、ここでザックを降ろして大休止。平地だとコースタイムの短縮は無理だろうと思っていたが、思った以上に短縮する事ができた。というのも、これから始まる雪渓の登りでは、テント装備を含む20kg超の荷物を背負った僕の足が亀足になるのは目に見えていたので、ここまで頑張って無休憩で歩いて来たのだ。

10:01 ババ平

ババ平に到着し、つい最近設置された簡易トイレで用を足したり、左の写真の謎の石積みの要塞の開かない扉を「開かねー」ともがいて遊んでいると、横尾で出会った小熊さんが追いついてやって来た。お互い単独行であり、「今日は人が少なくていいやねー」「だけど余りにも人が少なくて不安だねー」と、ここから先は残雪歩きとなるためアイゼンを装着して二人一緒に進む事とした。

ババ平のパノラマ写真を見る

10:31 雪渓を進む

ヤマケイ山岳情報によると、「雪上に赤布が設置してありますが、毎日のように雪の状態が変わりますのでご自分の判断で登ってきてください。」と書いてあったが、とりあえず赤布の通りに進もうとすると、いきなり「ズドン!」と足元が崩れ、雪渓の落とし穴に落ちた。幸い膝下程度の深さであったので、怪我する事はなかったが、余りの衝撃に後ろで見ていた小熊さんと目を合わせ、声に出さずとも「ここから先はやべー」という事が分かった。でもとりあえず、怪我が無くてよかった良かった。

11:02 残雪豊富な槍沢

雨がポツポツと降って来たので雨具を用意するが、アイゼンを着けた状態で雨具の下を履くのは大変だ。という事で僕の雨具の下は靴を履いたままでも履けるようにサイドが完全に開くタイプのものを購入しているのだが、これがまた手馴れていないので、アイゼンを外して履いたほうが早いのでは?という遅さである。小熊さんは雨具は不要とそのまま先に行ってしまった。

11:16 割れ目がポコポコと

何でまた、こんなにでかい割れ目が出来るのだろうと不思議に思う。そもそもこのルートは初めて通るルートであり、今立っている位置が夏にはどのようになっているのかさえ分からないので、割れ目が出来ている要因が分からないのだ。ちなみに夏ルートも通った事が無いのに雪山に入る事は危険であるし、遭難・怪我しても責任は取れませんので、この登山記録は参考にしないようお願いします。

13:13 グリーンバンド上部を進む

平地でいくら速く歩けても、登りで遅ければ何の意味も無く、小熊さんと二人で、のらりくらりとやってきた。「あそこを超えれば山頂間近か?」と思われる場所に到達すると、そこはグリーンバンドと呼ばれるハイマツ帯であり、小熊さんが下山者に確認すると、「ここから山荘までは2時間はかかるよ」と言われ、げんなりだ。

13:25 一瞬槍ヶ岳が見えた

左の写真は今日唯一望む事が出来た槍ヶ岳だ。槍の肩に山荘があるのだが、見るとまだまだ大分先である。そうこうしているうちに、山荘も槍も雲に隠れ、付近は全く視界が効かなくなってしまった。

13:34 雷にびびる

山に登りはじめて何度か雷に見舞われたが、今日ほど雷にびびった事はない。というのも付近には何も無く、広い雪の斜面に我々がいるだけなのだ。金属を身に着けていると落雷しやすいというのは誤りである事は現在の科学で立証されている事は知っているので手からピッケルを離す事はしないが、何も対応策が無いのも困る。とりあえず地面に伏せて雷の音がしなくなるのを待つが、歩こうとするとまた雷が鳴って地面に伏せる事となり、思うように前進出来ないので、雨に打たれながらの雷休憩が度々続いた。

14:57 プチホワイトアウト

雷・雨・あられ・みぞれと最悪な状態のオンパレードである。悪天候のど真ん中に我々はいるらしく、付近を見回しても付近にいる小熊さんしか見えず、目的地の方向すらもわからない状態だ。そして顔にあられがバチバチと当たり痛い。赤布があったから先に進めたものの、赤布が無ければ進むのを諦めてザックからテントを取り出して幕営していたであろう。

15:36 槍ヶ岳山荘に到着

何も見えない中を歩いていると、僕の前を歩いていた小熊さんが歩くのを止めて僕を待ってくれていた。「何だろう?」と思い小熊さんの所に行くと、「着いたよ~」と目の前に槍ヶ岳山荘が建っていた。正直「もうこれ以上歩かなくていいんだ」と思い、安堵感で一杯だ。今日はテント泊しようと思ってテントを担いで登って来ていたのだが、雷が怖いのと濡れた上着類を乾かしたいのもあり、槍ヶ岳山荘に素泊まりとした。ちなみに本日山荘に宿泊したのはたったの9人だ。山荘内の談話室には1日や2日停滞したとしても飽きる事のない位の膨大な量の本・写真集・山の歴史資料そしてTVがあり、暇な事はなかった。午後8時半になると山荘の電気が停止し就寝した。

2日目の記録

05:01 出発準備

朝早く起きて外が星空であれば、大喰岳に登って朝焼けの槍ヶ岳を撮影しに行こうと考えていたが、4時に起きて談話室の窓を開けて外を確認すると未だ雲の中だ。2度寝して再度起きだして出発準備をする。

05:29 槍の穂先が見え始めた

朝食を食べていると、外は雲が無くなり、青空が見え始めてきた。余りにも天気が良くなってきたので、シャッターチャンスを逃さないように朝食を早々に食べ終え、大喰岳に向かう。

05:29 山荘より大喰岳を望む

山荘から外に出ると、昨日降った雪が数センチ積もっていた。だがこれ位の雪は今日の太陽の日差しですぐにとけるだろう。山荘前からは昨日は望めなかった展望が目の前に広がり、気分は最高!これでもう昨日の悪天登山の嫌な気分は消えうせ、もうこの地にいるだけで満足感を覚える最高の気分だ。小熊さんは大喰岳には行かず、槍をピストンして下山するとの事なので、山荘前で小熊さんと「またどこかで会いましょう」と握手して、僕は右の大喰岳へ、小熊さんは左の槍ヶ岳へそれぞれ向かった。

05:33 大喰岳を目指す

アイゼンを取り付け、山荘の右手にあるテント場を通り過ぎ、飛騨乗越まで一度下る。通り過ぎたテント場は斜面を強引にテントのサイズに平地して作った何とも凄い立地条件であり、昨日はやはり山荘に泊まって正解だったようだ。

05:33 大喰岳を目指す

飛騨乗越から大喰岳を登り返す。目で見ると(写真で見ると大した事ないが)大喰岳への道は険しそうな感じがしたのだが、登ってみると大した事はなく、普通に登る事ができた。

05:41 振り返ると槍ヶ岳が

振り返るとこれぞ「槍」という感じの風景が広がり、後で登る槍ヶ岳の展望に期待がかかる。

05:48 急斜面を登る

雪が付着していない岩場を登っても良かったが歩きにくいので、雪の急斜面を直登して山頂を目指す。

05:50 大喰岳山頂に到達

大喰岳の山頂は雪原が広がる平らな山頂であった。展望は100点を付けたくなる程で、北アルプスの山々の大パノラマが広がり、「本当に昨日頑張って登って来て良かったなぁ」としみじみと思ってしまった。

大喰岳のパノラマ写真を見る1大喰岳のパノラマ写真を見る2

06:42 槍ヶ岳山頂を目指す

大喰岳を下り、槍ヶ岳山荘に到着。アイゼンを外し、今度は槍ヶ岳の山頂を目指す。

06:50 梯子と鎖を使って登る

昨日少しだけ積もった雪が岩の上を覆っており、これがまたよく滑る。登りはよいが下山は注意が必要だ。用意された梯子と鎖を上手く使って、山頂を目指す。

06:58 最後の階段を登る

最後の階段には昨日の雪が未だに付着していた。この垂直の岩肌に取り付けられた階段を登ると槍ヶ岳の山頂だ。それにしても、標高3,180mの地点を垂直に登っているとは何とも凄い事だ。

07:00 槍ヶ岳山頂

槍ヶ岳の山頂に到達すると「この世の中でこの山頂に立って感動しない人はいないだろうな」と思える程最高の展望が広がっていた。槍ヶ岳は見ての通り槍のように尖っているので山頂も狭く、狭い分だけ360度の見通しが利く。広い山頂ではこのような360度の展望は見られないのだ。僕は山を始めてからずーっと槍ヶ岳に登りたいと思っていたが、良いパノラマ写真を撮るには人が沢山居ては困るわけで、夏のシーズンにこの山頂に立っても人ばかりが写ってしまい良いパノラマが撮れないだろうと諦めていたのだが、今年から雪山に入り始めてついに今日チャンスがやってきた。ちなみに僕が先に大喰岳に登ったのも計算であり、僕が大喰岳に登っている最中に他の登山者は槍ヶ岳に登り、僕とすれ違いに下山するだろうと思ったからだ。実際にこの計算は当たり、山頂は僕と外人さん2人だけの貸切状態であり、最高のパノラマを堪能・撮影出来て大満足だ。

槍ヶ岳のパノラマ写真を見る1槍ヶ岳のパノラマ写真を見る2

槍ヶ岳のパノラマ写真を見る3

07:21 北鎌尾根を望む

「いつかもっとレベルアップしたらこの北鎌尾根に挑むだろうな」と思ってしまった。

07:32 最高の展望を目に焼き付けて下山する

今度またこの山頂に来たとしても晴れているとは限らないので、この展望を目に焼き付けて下山する。幾らパノラマ写真を撮って思い出を残しても、目で焼き付けた記憶には勝らないのだ。

07:37 遥か遠くに白山を望む

槍ヶ岳を下っていると、昨日出会った中高年パーティーが登ってきた。昨日は視界が悪かったため、殺生ヒュッテに泊まったらしく、今朝登ってきたようだ。一人の男性が「白山が見える!」と教えてくれたので、見てみると笠ヶ岳の遥か先にうっすらと見えていた。白山も登ってみたい山の一つだ。同じ百名山の荒島岳とくっつけて、いつ登ろうか早く計画を立てねばならない。

07:52 槍ヶ岳山荘に到着

お世話になった槍ヶ岳山荘に無事到着。荷物は既に纏めてあるので、山荘の方にお礼を言って早々に下山する。ちなみに、山荘に入ると、一緒に泊まっていた外人さん3人組も帰り支度をしており、1人の足元を見て仰天した。何と履いている靴は、登山靴では無くスニーカーである。更にピッケルは持っておらず、当たり前だがスニーカーにはアイゼンは取り付けられるはずが無いので持っていない。さすがにこれには僕も仰天で、「外人には何やってもかなわないなぁ」と思ってしまった。というか呆れてしまった。

槍ヶ岳山荘のパノラマ写真を見る

08:11 雪の斜面を下る

昨日は何も見えなかったこの斜面も、今日は視界があるので、安心して下山できる。斜面はそれなりに急なのでグリセードで下る。余り馴れていないため何度も転び、「だまって普通に歩いたほうが足に負担もかからずによいのでは?」と思ってしまったが、結構楽しくてムキになって尻もち着きながら斜面を滑り降りた。

08:19 槍が雲に隠れだす

後ろを振り向くと槍の穂先が雲に隠れてしまっていた。今回は本当に何もかもが計算通りに進み、最高の気分である。

08:21 殺生ヒュッテ

殺生ヒュッテとは凄い名前である。過去にどんな殺生が行われてきたというのだろうか?開山される前までは、この辺は猟師のみが立ち入る地域であったろうから、カモシカなどの動物を殺生した事と関係があるのだろうか?う~ん、名前の由来を知りたい。

08:52 南岳小屋の主人とすれ違う

下山時に一人の男性とすれ違う。すれ違った際に、歩き方を見ると小刻みに雪面を歩き、無駄の無い歩き方をしているので、もしかすると小屋の関係者じゃないかと思ったが、後日確認してみると南岳のご主人である事が分かった。

08:58 豊富な残雪

今度槍ヶ岳に来る時は、同じシーズンにテント装備では無くスノーボードを担いで登る事にしよう。南岳小屋の主人のような大喰岳からの滑降は怖くて出来ないが、槍ヶ岳山荘の下からなら僕のレベルでも滑られるだろう。

09:16 雪渓の最後

雪渓歩きもババ平手前で終了。昨日はこの辺で落とし穴に落ちたので、赤布に頼る事なく慎重にルートを選んで無事雪渓を歩き終えた。ここから先は夏道が続く。

09:20 ババ平

ババ平に到着するも、大して疲れていないのでそのまま先に進む。

09:36 槍沢ロッジ

槍沢ロッジに到着すると、山荘で別れた小熊さんに再び会うことが出来た。小熊さんに外人さんがスニーカーで槍ヶ岳まで登っていた事を伝えると、やはりびっくりしていた。

10:30 ニリンソウが沢山咲いていた

横尾に向かう途中の道の脇には沢山のニリンソウが咲いていた。小さい花が沢山咲き乱れており、何とも可愛らしい。

10:46 横尾

横尾に到着し、屏風ノ頭方面の景色を眺めながら、20分程休憩する。小熊さんも到着して話をするが、「横尾~上高地の間のルートはつまらないないよね」と意見が一致した。初めて上高地に来た時の感動は既に過去の物となり、今では苦痛にさえ感じてしまうこのルートである。人間目が肥えるとロクな事はない。

11:47 徳沢

さっき休んだばかりなので、そのまま通過する。

12:21 明神

横尾→徳沢→明神と向かうにしたがって、観光客が多くなり、普通に街中で歩いているのと変わらない人混みようだ。去年の夏に来た時よりも人が多いような気がする。そういえば、最近通勤時に駅前に「上高地行き」の観光バスが定期的に停まっているのを目にしたが、観光的に見て上高地は今はやっているのだろうか。

12:54 河童橋に到着

もう梅雨なのかな~。明神から河童橋に向かう間に雨が降り始め、折りたたみ傘を差しながら歩き、河童橋に到着した。結局この槍穂連峰も晴れたのは朝5時~8時の3時間だけであった。

観光客で大混雑の上高地

上高地のバスターミナルは観光客で大混雑だ。マイカーで来ている人達が車を停めている沢渡に向かうバスが一番混んでおり、7,80人は列に並んでいた。新島々・松本駅行きのバスも2時間先の15時台のバスまで満員だ。食堂で時間を潰し、しんごさん・まさこさんに報告のメールを入れて松本行きのバスに乗り込み、帰路に向かった。