日程・行程

2003年11月22-24日

1日目:伊豆稲取駅-三筋山-八丁池口-青スズ台-八丁池(テント泊)
2日目:八丁池-天城峠-猫越岳-仁科峠-塊の山(テント泊)
3日目:塊の山-船原峠-達磨山-戸田峠-金冠山-木負農協バス停

1日目の記録

3連休である。先週、矢倉岳と金時山で富士山を望めなかったのが悔しかったため、もう一度富士山を見に山に登る事にした。週間天気予報を見ると、3連休は3日連続晴れの予報だ。これはもう、僕の登山バイブルとなっている「あの空の下で会おう」で紹介されていた伊豆半島横断の2泊3日コースに行くしかない!それにしても、伊豆半島横断とは何とも素晴らしい冒険であろう。1日目に相模湾の海を眺め、3日目には反対側の駿河湾の海を眺める事になるのだ。こんな冒険は生まれて初めてである。という事で、上記サイトの登山記録を印刷して携帯し伊豆半島横断に挑む事となった。

品川から新幹線に乗り、熱海駅に向かう。今回も前回と同じく車内にはTOKIOの「Anbitious Japan!」が流れており、気分は最高だ。それにしても2週連続で新幹線を使うとは何ともゴージャスな山旅だ。というのも我が家は東京多摩北部の埼玉県との県境であるため、新幹線を使わずに各駅停車で静岡に向かうと、スタートが昼になってしまうのだ。スタートが昼になると1日目で進める距離は限られてしまい、更に1日プラスしないと行程が組めなくなってしまう。という事で新幹線を使わざるを得ないのだ。まぁ2ヶ月間も試験勉強のために大好きな山に登れず、ストレスが溜まっていたのでこれ位の出費は仕方ないだろう。新幹線でかっ飛ばしてあっという間に熱海に到着する。熱海でJR伊東線に乗り換え、伊豆稲取駅に向かう。伊豆稲取駅に向かう途中で車内から相模湾を望むと伊豆大島が見えた。天気は良いし気分は最高だ !

伊豆稲取の駅に到着し、三筋山に向かおうとするが、2万5千分の1の山岳地図では三筋山への詳細ルートがわからない。駅前のスーパーのおばちゃんに確認すると、三筋山の方向は分かるがルートまではわからないという。う~む、困った。するとそこに助っ人登場だ。たまたま買い物に来ていた三筋山へのルート上に自宅があるおばちゃんに出会い、自宅まで帰るついでに道案内してもらえる事になった。おばちゃんと二人、三筋山への登り道を歩く。それにしてもおばちゃんの歩くスピードは速く、重いザックを背負ってはいるが僕と同スピードだ。確認したところ小さい頃からほぼ毎日のようにこの登り道を歩いているので、このスピードが当たり前になっているとの事だ。おばちゃんの家に着くと、「あとは一本道よ、頑張って!」のお言葉を頂き、お礼をして三筋山を目指す。

左右にミカン畑がある舗装路を登り、ビニールハウスがある集落を超えると東伊豆乗馬クラブ前に到着。乗馬クラブ前にある三筋山の案内板を見ると、三筋山から先の八丁池までは、9.6kmとある。山道であるため、平地を9.6km歩く2倍は辛い現実を考えると嫌気がするが、伊豆半島横断のためにはそんな事は言っていられない。伊豆半島は今が紅葉の時期であり、まだ見ぬ紅葉を早く見たくなり、足早に舗装路を進むと、三筋山に到着した。三筋山の山頂からの眺めは素晴らしく、わずか800m程の低山ではあるが、東に駿河湾と伊豆大島、西には天城山、そして黄・橙・赤に色付いた木々の紅葉が何とも美しい。

三筋山のパノラマ写真を見る1三筋山のパノラマ写真を見る2

三筋山山頂から見た紅葉。丁度紅葉真っ盛りだ。
三筋山山頂から見た紅葉。

三筋山より駿河湾を望む。写真では分かり難いが伊豆大島が見える。

これから先の八丁池までは9.6kmの長丁場であるため、早々に三筋山を発つ事にする。八丁池までの道は距離は長いが急な登りは無く、紅葉の木々を楽しむなどしているうちに三筋山から3時間程で八丁池口のバス停に到着した。バス停付近の沢から水を汲み、少し遅い昼食のラーメンを食べる。ここから先には水場が無いため、今の内に水をがぶ飲みしてポリタンに大量に水を汲んで出発する。八丁池に向かう途中、綺麗なロッジ風のトイレの前の看板に「展望台まで徒歩1 分」と書かれているのを見つけ、寄り道する。展望台では富士山は見られなかったが綺麗な夕日を望む事が出来た。この調子だと明日も晴れるだろうと期待を胸にし、来た道を引き返す。トイレから10分程歩くと、八丁池に到着。日が暮れかけているため、急いで写真撮影とテントの設営を行う。ちなみに国立公園内は指定地以外幕営禁止だ。八丁池付近も当然幕営禁止であるが、「なるべく自然に影響の無い場所に・・・」と言い訳してついつい幕営してしまった。ごめんなさい。


八丁池に向かう途中で真っ赤に紅葉するモミジを見る事ができた。

日暮れの八丁池は幻想的というより、幽霊が出そうで不気味だ。17時を過ぎると八丁池の周りは既に真っ暗で、1200mの山の上なので、当たり前だが街灯なんてありゃしない。唯一の灯りといえば僕のヘッドライトだけだ。単独行であるため、山の上で日が暮れるとラジオを聴く以外に何もする事は無いのだが、どのラジオ局も面白くもない番組ばかり放送していてつまらない。こんな時は寝るに限る。朝から晩まで歩き通しで疲れていたので、目を閉じるとあっという間に深い眠りに入れそうだ。しかし、寝ようとする度に鹿の「キャオーン」という鳴き声に何度もびっくりして起きてしまい、結局なかなか寝付けなかった。もしかしたら鹿は「国立公園内で、テント泊すんじゃねーよ!」と僕を怒っていたのだろうか?

八丁池のパノラマ写真を見る


日暮れ間際の八丁池。

2日目の記録

翌朝7:00に起きる。テントから外に出て目の前に広がる八丁池を見ると、池の水際から霧が発生していて何とも幻想的だ。霧が発生しているのは良いのだが、空を見ると曇り空で、どうやら天気予報は外れたようだ。テントを撤収し、八丁池の畔にある休憩所で朝食を食べ終え出発する。八丁池を北に進めば日本百名山の天城山に辿り着くが、今回の目的は伊豆半島横断であるためパスだ。昨日通過したトイレ前の分岐を南に進み、天城峠へ向かう。天城峠への道では紅葉の木々を期待していたのだが、既に紅葉は終わっており、今では一部の木々が色付きを残しているのみである。途中、台風で流されてしまったというワサビ田を通り過ぎると、天城峠に到着した。


天城峠へ向かう途中にあるワサビ田。先日の台風で殆ど流されてしまったとの事だ。


残念ながら紅葉の時期は過ぎてしまったようだ。

天城峠はブナの巨木の下にテーブルとベンチがある休憩スペースとなっている。椅子に座って休んでいると地元の登山者のグループがやってきて、山の話で盛り上がる。僕が伊豆半島横断の旅をしている事を話すと、やけに感動したらしく、パンやお菓子など沢山頂いてしまった。今回の縦走路は山小屋が無く、貴重な食料を頂いて感謝する。地元の登山者グループと進む方向は一緒のため、同時にスタートするが、やはり年の差かペースが合わず先に進む事とする。天城峠からの道は総延長40km余の「伊豆山稜線歩道」と呼ばれているハイキングコースとなっている。天城峠から1時間程歩くと二本杉峠に到着。二本杉峠は旧天城峠であり、幕末開港をめぐって吉田松陰やアメリカ初代駐日総領事のハリスらが超えた峠だ。ツゲ峠に用意されている椅子に座り昼食を食べ、ツゲ峠からの起伏の無い樹林帯を進むと伊豆山稜線歩道の全コースで最高峰(1035m)の猫越岳に到着。

猫越岳は山頂ともピークとも言えない稜線の単なる通過点という感じだ。猫越岳を少し行くと、約250万年前の噴火で出来たといわれる火口湖が見えてくる。火口湖のベンチに座って眺めて見るが、湖というには規模が小さく、沼といったほうが適当だろう。火口湖を発つとすぐに展望台に到着。展望台からは、これから向かう山々が見え、その先に駿河湾が見えた。展望台では地元の単独行の男性に出会い、明日通過する達磨山と金冠山からの駿河湾越しに見る富士山の眺めは最高であるなど、伊豆の山に関して色々と情報を教えて貰う。

猫越岳火口湖のパノラマ写真を見る猫越岳のパノラマ写真を見る


猫越岳付近の火口湖


猫越岳展望台より南西方面を望む。

展望台直下の急な道を下り、再度登って後藤山を下ると視界が開け、天城牧場の赤い屋根が見えてきた。下り切ると天城牧場の管理道に差し掛かり、右に曲がって天城牧場へと向かう。というのもこの先に水場が無いため、牧場に水を貰いに行かなくてはならないのだ。牧場の管理事務所に到着し、入り口で「すいませーん」と呼んでも誰も出てこない。目の前には水道の蛇口が見えていたが、勝手に進入して見つかりでもしたら住居侵入罪で逮捕されてしまう。もしかしたら近くにある牛舎で作業中なのかと思い、道路を下り、牛舎へ向かう。牛舎に入ると牛にエサを与える仕事の最中の若いイケメン作業員に会う事ができた。イケメン作業員に事情を説明し、水を分けて頂けないかとお願いしたところ、真っ白な歯を光らせて「いいですよ~」と言ってくれた。実は牧場だけあって牛の糞などで結構臭うのだが、臭さも吹き飛ばすイケメン作業員の笑顔に救われた。管理事務所に戻り、水道の蛇口から水筒に満タンに水を汲み、お礼をして仁科峠への道を戻る。仁科峠に向かう途中、車がやってきて僕の前で停まる。「何だろう」と思って見ると猫越岳で出会ったおじさんだ。おじさんには牧場に水を貰いに行く事を伝えていたのだが、どうやら心配して来てくれたみたいだ。無事に水を手に入れる事が出来た事を伝えると、「よかったねぇ」と仰ってくれて、「がんばって!」の一言を残して去っていった。僕のために心配して来てくれるとは何とも嬉しい事だ。旅の出会いって本当に良いものだ。

仁科峠には車やバイクなどで旅するハイカー達が沢山集まっていた。仁科峠の近くには巨石があるピークから360度の展望を望めるらしいが、曇り空のために何も望めない事は分かっていたので、そのまま車道を進み、風早峠へ向かう。風早峠は名前の通り、風が強い。だまっていると寒い位なので先を急ぐ。風早峠からは明るいスズタケの原の尾根歩きが続く。スズタケの原を切り開いた登山道を進むと、石仏と休憩舎がある宇久須峠に到着。屋根のある休憩舎にテントを張って泊まろうかと思ったが、日暮れまでまだ時間があるので先へ進む。宇久須峠からの道を登り切ると、ここでスズタケの原は終了だ。ピークから樹林に囲まれた道を下り、急な丸太の階段を登り返すと本日の宿泊予定地である塊の山に到着。塊の山を少し下った先の平坦部にテントを張り、今日の行程は予定通り無事終了した。2日目の今日は天気に恵まれず、結局一度も富士山を望めないまま終了してしまった。

風早峠のパノラマ写真を見る


休憩舎のある宇久須峠。スズタケを切り開いた登山道は視界も良く、歩いていて気持がよい。

3日目の記録

朝6:00に起きる。起きて一番最初に気にしたのは天候だ。今日は伊豆半島横断の最終日で、達磨山と金冠山から富士山の素晴らしい展望を望む日なのだ。勢い勇んでテントから外に出てみると、湿り気のある空気にがっかりする。辺りは一面霧に覆われており、空は曇り空である。ラジオで天気予報を聞いてみると、伊豆半島は曇りのち夕方から雨という最悪の予報であった。先週は箱根で富士を望めず、今週は伊豆半島で3日に渡り歩いているのに富士山を望めない。自分は余程運の無い人間なのであろうかと一人で悲しくなる。こうなったら、もう富士山の展望は捨て、伊豆半島横断のみに集中して挑もうと決意するが、やっぱり富士山が見えないとモチベーションが上がらない・・・。

塊の山からは下りが続き、再び西天城高原道路沿いのコースを行く。土肥峠を過ぎ、南無妙峠に向かう途中、コースから少し外れた林の中で鹿を目撃する。いつもなら人間に出会った鹿は驚いてすぐに逃げてしまうのだが、今回は少し様子が違う。鹿の足は罠に挟まっており、逃げられない状態だ。僕が何か行動する度に鹿は逃げようとし、足に挟まった罠にもがき苦しんで逃げられない。痛々しく見ていられないので、鹿には申し訳ないが目をつぶって先へ進む事にする。それにしても狩猟または農作物を食い荒らす鹿の駆除をしているのは分かるのだが、何もハイキングコースのすぐ傍に罠を仕掛けなくてもよいのではないか。もしも親子でこの道を歩き、子供がはしゃいで林の方に向かい、鹿と同じように落ち葉に隠れた罠に引っ掛かったらどうするのだろうか?

その昔に往き倒れになった夫婦を祀る「南無妙法蓮華経」と彫られた石碑が建つ、南無妙峠に到着。緩やかな登りを繰り返して吉奈峠を過ぎ、急な丸太の階段を登りきると棚場山の山頂に辿り着く。棚場山の山頂は展望が悪く残念だ。棚場山から自然の芸術とも思えるアセビの林などを下ると船原峠に到着した。地図には西に進み西伊豆スカイラインの料金所に達する登山道が記載されているが、いくら探しても見つからないので駐車場を右に進み、車道を通って料金所に向かう。料金所の脇を抜け、延々と続く車道の登りを1時間程歩くと土肥駐車場に到着。地図には記載されていないが駐車場には売店があり、水を切らす一歩手前だったので助かる。ここで昼食としカップラーメンを購入。ラーメンを食べながら売店のおばちゃんと伊豆の風景についての話で盛り上がる。僕がホームページで日本各地のパノラマを紹介している事を話すと、「私のパノラマも見て!」と持ち出してきたのが、 「写るんです」で撮った写真を透明テープで繋げて作ったパノラマ写真だ。思わぬ所でパノラマ仲間に出会い、少し嬉しくなる。おばちゃん作のパノラマは、売店の目の前にある太平洋展望台から撮ったもので、駿河湾越しの富士山に南アルプスの大展望が写っており見事な出来栄えだ。今日は天気が悪いので何も見えないが、おばちゃんのパノラマでどのような感じの展望かを知る事ができたので、おばちゃんに大感謝だ。

売店を後にし、伽藍山を過ぎると再び車道に出る。地図には車道と平行した登山道が記載されているが発見出来ず、結局車道を歩く。達磨山直下の駐車場に到着し、笹原を切り開いて作られた登山道を登るとすぐに達磨山の山頂だ。昨日出会った地元の登山者から達磨山の展望を進められており楽しみにしていたのだが、霧のために展望は全く望めない。展望が望めないだけでも残念なのだが、デジカメの液晶画面を見ると「カードをフォーマットして下さい」 と表示され、更に残念な事が続く。恐らくフォーマットすれば続けて写真を撮れるのだろうが、ここでフォーマットすると今日撮影した写真全てが消えてしまう。まだこの状態なら家に持って帰れば救いようがあるかもしれないため、フォーマットせずに撮影を断念してカメラをザックにしまう。小達磨山と戸田峠の駐車場を過ぎ、 駐車場からほんの少し登ると金冠山に到着。金冠山からの雄大な富士山と弧を描く駿河湾を望めるパノラマは伊豆三絶景の一つに数えられるが、達磨山と同様に霧の真っ只中で展望は全く望めなかった。

あとは木負に下るだけだ。金冠山の標高816mに対し、木負は海抜0mなので標高差約800mを下る道のりだ。長旅のゴールが近いと知ると嬉しくなり、ラストスパートをかける。キャンプ場を過ぎ、ミカン畑の道を下ると2時間程で木負の海岸に到着した。

ついに伊豆半島の東海岸から西海岸への横断成功だ。山頂に辿り着いた時の達成感も良いが、横断という目標を達成した喜びもこれまた良いものだ。正直な所、本音は伊豆半島横断よりも富士山を望みたかったのが、富士山は晴れの日に山に登ればいつでも見る事ができる。それよりもお金では買えないこの達成感、湧きあがる充実感を感じられたので大満足だ。

ちなみにデジカメのメモリーカードだが、結局家に戻っても復旧できず、3日目に撮影した写真は全て失ってしまった・・・。